2008年1月5日土曜日

療養病床、削減幅を緩和 厚労省修正で存続5万床増

 慢性疾患の高齢者が長期入院する療養病床の削減問題で、厚生労働省は現在約36万床あるベッド数を2012年度末に15万床まで減らす当初の計画を大幅に緩和し、5万床上乗せした20万床程度を存続させる方針に変更しました。高齢者人口の伸びへの対応と、早期のリハビリテーションを重視する観点から計画修正に踏み切るようです。
 厚生労働省は、療養病床の高齢者の半分近くは専門的な治療の必要性が低い「社会的入院」とみています。退院後の介護の見通しが立たないなどの理由で入院が続き、医療費を押し上げる一因となっていると分析。2006年の医療制度改革では、費用を医療保険でまかなう「医療型」の25万床を2012年度末に15万床へと減らし、介護保険でまかなう「介護型」は全廃する計画を打ち出しました。介護型は当時13万床で、現在11万床まで減っています。
 療養病床の廃止分は、よりコストの低い老人保健施設や有料老人ホームなどに転換し、厚生労働省は年間3,000億円の医療・介護給付の削減を見込んでいました。これに対し、日本医師会や病院団体は「医療行為が必要な人も多く、行き場のない高齢者が続出する可能性がある」と反発していました。
 だが、この削減計画は将来の高齢者人口の伸びを考慮していなかったようで、2006年末に公表された最新の人口推計では、75歳以上の人口は2006年の1,216万人から2012年には1,526万人へと25%増えます。厚生労働省は各都道府県に対し、2012年度末時点で存続させる療養病床数の目標を出すよう求め、全容がほぼ固まりつつあろます。高齢者の人口増を反映させると、全国で18万床程度が必要になります。
 さらに、当初計画では医療型の削減対象に含まれていたリハビリ用の療養病床2万床も存続させることにしました。脳卒中や骨折の後などの早期リハビリを充実させ、寝たきりの高齢者が増えないようにします。この分も合わせ、存続ベッド数は計20万床程度となります。
 ただ、療養病床の削減計画が大幅に緩和されることに伴い、医療費の削減効果も限定的にならざるを得ず、将来の税負担増や現役世代の保険料の引き上げにつながる可能性があるとみられています。

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